腰痛予防には腹圧を高めて体幹を安定させることが大切

「腹圧」という言葉をご存じでしょうか。
人間の体幹部(お腹と腰にあたる部分)にはあまり骨がありません。
胸部になると背骨と肋骨があるのですが、腹部には肋骨がありませんよね。
したがって、胸部に比べて可動域が広い反面、構造的に弱いのです。

この部分の強度を上げるために必要なのが、お腹の中の圧力「腹圧」です。
これは、腹腔という腸などが収まっている部分の圧力のことです。

この腹腔が風船であるとイメージしてください。
風船の中の圧力が高ければ体幹部が安定しますし、風船の空気が抜けてきてしまえば、ふにゃふにゃして安定感がなくなります。
腹腔内の圧力を高めることが、体幹を安定させることにつながるのは容易にイメージできます。

お客様に喜ばれた話

もうずいぶん前の話ですが、この腹圧の話をして、お役様に大変喜ばれたことがあります。

そのお客様は、当時50代の男性で、ソフトテニスに情熱を注いでいます。
それで、週一回のペースでメンテナンスに来るんですね。

その時は、腰が痛いと言っていました。
特に何をしたわけでもないのに、服を着替えている時に、急にぎくぎくっとなったとのこと。
特に動けなくなるほどの痛みでは無いけれど、前かがみになるとびくびくっと腰のあたりの筋肉が反応すると。

これは、非常に軽いぎっくり腰のような感じですねと申し上げました。

ぎっくり腰を予防するには腹圧を高める

ぎっくり腰は、何か重いものでも持った時になると思っている方が多いのですが、実は重いものを持った時にはあまりならないのです。むしろ、軽い何気ない動作の時になることが多いのです。

落ちたものを拾おうとしたとき、くしゃみをしたとき、しゃがんでいて立ち上がった時、立ったまま靴下をはこうとした時。
そんな時にギクッとなってしまうことが多いのです。

そんなぎっくり腰を予防する方法として、腹圧を高めるといいですよという話をしました。
反対に言うと、ぎっくり腰になるときというのは、腹圧が抜けている時なのです。

腹圧というのは、腹腔内(胃腸などがおさまっている部分)の内圧のことです。
この部分は、身体を支える骨が、腰椎(背骨の一部)しかないので、構造的に弱いんです。
それで、頑張って筋肉で支えないといけない。

この部分の筋肉というと、一般の人は、腹筋と背筋のことだと考えます。
ここでいう腹筋とは腹直筋のことで、いわゆる腹が割れる、最近ではシックスパックなんて言いますが、あのお腹の前にある筋肉ですね。
それから、背筋というのは、脊柱起立筋のことを指しているというイメージです。

「腹筋と背筋のバランスが悪くなると腰を痛める。」と、一般的に考えられています。
しかし、この部分の圧力の話は、まだまだ一般的なイメージとして定着しているとは言えません。

腹圧を高める方法

では、この腹腔の内圧をあげていくにはどうすればよいのか。

ます、腹式呼吸でお腹を膨らませます。
この時、横隔膜が下に下がり、内臓を押し下げます。
押し下げられた内臓は、骨盤を前傾させ、腹部を前に押し出し、腰椎の前湾を助けます。

この状態で、腹壁の一番奥を水平に走っている腹横筋という筋肉を収縮させます。
イメージとして、おへその下の丹田と呼ばれる場所にグッと力入れてみます。
ヘンな話、排便をするときにいきむ感じです。

そうして、肛門もしっかりと締めて、骨盤底筋群も力ませると、腹圧をグッと高めることが出来ます。

さらにこの状態で、丹田に自分の重心があるというイメージを持つことで、自分の身体が安定します。
体幹が安定して、身体に軸を作ることが出来るのです。

お客様が反応しました!

ここまでお話をしたら、急にお客様が興奮気味に話しだしました。

「そう、その軸を作るってのがわからなかったんですよ!」

どうもお話を聞くと、テニスをしている時に色々な他人から軸が出来ていないという指摘を受けていたと。
でも、自分ではどうやったら軸を作れるのかがイメージできなかったと。
今の話を伺って、そのイメージが分かった気がしましたとのこと。

それまでは、身体が力んでいると瞬時に動けないと思って、身体の力抜いて立つようにしていたとのこと。
そして、お腹の力も抜いていたというんですね。
お腹の力を抜いていると、身体が一体となって動いてくれないので、上半身と下半身がバラバラに動いてしまいます。
この状態では、身体を動かす時に上半身の動きが遅れるために、軸がぶれて身体が安定しないばかりか、無駄な動きが多くなってしまいます。

「これって、どんなスポーツにも大事なことですよね。」
とおっしゃるので、
「そうですね。スポーツに限らず、日常生活でも大切なことです。」
と申し上げました。

整体の学校で最初に教わった

この話は、もう25年近く前、私が整体の学校に見学に行ったときに、その時の講師の先生が教えてくれた話です。
この話があまりにも面白かったので、その学校に入学したというわけです。

入学後は、その講師についてトレーニング理論を習ったのですが、とにかく「腰椎の前湾と腹圧」が何よりも大事だと、耳にタコができるまで聞かされました。

この腹圧を高めるという話は、専門的な話題の中ではたまに見聞きしますが、一般の方々までは広まっていない感じがしますね。
これはとても大切なことですので、ここでシェアしておきたいと思います。

「腰部の前湾と腹圧」で体幹の安定度がぐっと増します。
それによって、身体の持っている能力を十二分に発揮することが出来るようになります。

精神も安定する

また、丹田に意識を持っていくことで、精神的にも安定してきます。
前出の講師は、この状態を「腹がすわる」と言っていました。
丹田にあったはずに意識が、どんどん上に上がってくることを「腹が立つ」頭まで登ってくると「頭にくる」というとも言っていました。

腹が立った時には、丹田に自分の重心を感じるようにイメージしてください。
ココロもカラダも、落ち着きを取り戻し、安定感が出てきます。

腰痛予防、体幹安定、競技パフォーマンスの向上、精神の安定に、「腰部の前湾と腹圧」をぜひ、イメージしてみてください!

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